この記事では、空気抵抗と形状の関係について解説します。
「厚さ \(d\) の流線型」と「直径 \(\displaystyle \frac{d}{10} \) の円柱」では、実は空気抵抗はほぼ同じになります。
なぜこのような結果になるのでしょうか。
この記事では、平板や円柱、流線型などの空気抵抗について比較し、空気抵抗の低減に有効な流線型やゴルフボールのディンプルの効果について解説します。
空気抵抗の基本
空気抵抗を考えるにあたり、まず空気抵抗が何によって発生するか知る必要があります。
空気抵抗には摩擦抵抗と圧力抵抗の2種類があります。
- 摩擦抵抗:流体と物体表面の間の摩擦による空気抵抗
- 圧力抵抗:流れの剥離によって生じる空気抵抗
空気抵抗と形状の関係
①縦置きの平板の空気抵抗
平板を流れに対して縦に置いた場合、平板の端から流れが大きく剥離し圧力抵抗がとても大きくなります。空気抵抗のうち摩擦抵抗の割合はとても小さく、圧力抵抗が支配的です。
②円柱の空気抵抗
①の平板と同じ前方投影面積を持つ円柱です。
剥離は円柱の側面より少し前方で起こります。①の平板に比べ摩擦抵抗は増加するものの、剥離が少し抑えられるため圧力抵抗が減少します。空気抵抗の合計値は①の平板より小さくなります。
③流線型の空気抵抗
①の平板、②の円柱と同じ前方投影面積を持つ流線型です。
流線型の流れでは、②の円柱に比べ表面積が増えた分摩擦抵抗が増加します。しかし剥離がほぼ発生しないため圧力抵抗が大幅に減少します。結果、空気抵抗は②の円柱の約1/10に減少します。
このように流線型では圧力抵抗を低減することで空気抵抗を小さくしています。
④直径1/10の円柱の空気抵抗
②の円柱の直径を1/10にした円柱です。流れの速度は同じです。
驚くべきことに、大きさが1/10にもかかわらず③の流線型と空気抵抗は同等になります。摩擦抵抗は小さいですが、剥離による圧力抵抗が大きいためです。
このように円柱は圧力抵抗によって空気抵抗が大きくなります。
⑤荒い表面の円柱
②の円柱の表面を荒くすると剥離が円柱の後方に移動します。これは荒い表面によって流れが乱流となり剥離しにくくなったためです。
乱流になったことで摩擦抵抗は増加しますが、剥離が抑えられたことで圧力抵抗が減少します。
摩擦抵抗と圧力抵抗のトータルで、空気抵抗は②の円柱に比べて約半分まで減少します。
まとめ
- 縦にした平板や円柱は、空気抵抗のうち圧力抵抗の割合が大きい。
- 流線型は、剥離を抑えることで圧力抵抗を軽減した形状である。
- ゴルフボールのディンプルは、表面荒くして流れを乱流化することで圧力抵抗を低減している。
参考資料
- NASA-SP-367: Introduction to the aerodynamics of flight
- Boundary Layer Theory, Hermann Schlichting, 1979
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