翼型まわりの空気の流れ(粘性流体)

翼型のまわりで生じる基本的な流れの現象(流れの加速や圧力の変化)は「翼型まわりの流れ(非粘性)」の記事で解説しました。

翼型まわりの流れは粘性によってどのように変わるのでしょうか。この記事では粘性流体における翼型まわりの流れを解説します。

この記事では一般的な翼型まわりの流れの様子を解説しています。

翼型まわりの流れの様子(粘性流体)

翼型まわりの流れの基本現象である「前縁で速度ゼロ(最大圧力)・最大翼厚位置で最高速度(圧力最小)」となるのは非粘性流体の翼型まわりの流れのときと同じです。

粘性流体で生じる一番の特徴は、前縁から徐々に発達する境界層です。

 非粘性流体の翼型まわりの流れ
 境界層とは?

翼型における境界層の発達・剥離

前縁から最大翼厚位置までは層流境界層

前縁から最大翼厚位置までは負の圧力勾配(流れ方向に圧力が低下)なので、前縁から生じる境界層は層流境界層のまま発達します。

 層流境界層とは?
 圧力勾配が流れに及ぼす影響

最大翼厚位置より後方で遷移

最大翼厚位置を通り過ぎると正の圧力勾配(流れ方向に圧力が上昇)に変わります。流れが不安定になり層流境界層は乱流境界層に遷移します。

 遷移・乱流境界層とは?

遷移後から剥離、後流の形成

乱流境界層へ遷移した後も正の圧力勾配のために境界層内の流れが徐々に減速し、速度がゼロになります。速度がゼロになると境界層は物体に付着できず剥離してしまいます。

剥離点より後方では後流(wake)が形成され、翼は空気を引きづり続けるような流れになり圧力抵抗の原因となります。

 境界層の剥離とは?

粘性流体と非粘性流体における翼型まわりの圧力の違い

上の図は、一様流から翼型の表面に沿った圧力変化を粘性流体・非粘性流体の両ケースについて示しています。

非粘性流体における翼型まわりの圧力の様子は「翼型まわりの流れ(非粘性)」で解説しています。

一様流から前縁までの流れ(①〜②)

一様流は翼型の前縁に近づくにつれて流れが翼にせき止められるので、翼表面の圧力が上昇します。

ここでは粘性・非粘性による大きな違いはありません。

前縁から最大翼厚位置までの流れ(②〜③)

前縁で高圧となった流れは最大翼厚位置に向かって加速します。ベルヌーイの定理から速度(動圧)が増加した分、圧力(静圧)が低下します。

粘性流体では摩擦などのエネルギーロスがあるため、非粘性流体ほど圧力は低下しません。

 ベルヌーイの定理とは?
 動圧と静圧とは?

最大翼厚位置から後縁までの流れ(③〜④)

粘性・非粘性流体ともに最大翼厚位置から後縁にかけて流れは徐々に減速し圧力が上昇します。

粘性流体では、境界層が剥離すると翼表面の圧力低下が消失します。これが失速の原因となります。

非粘性流体では後縁でよどみ点圧まで上昇しますが、剥離が起こると後縁の圧力はよどみ点圧に比べて低下したままとなります。これが圧力抵抗の原因となります。

 圧力抵抗とは?

後縁より後方の流れ(④より後方)

後縁より後方では境界層が剥離した流れ(後流)が続きます。

粘性流体では、後流が続くため非粘性流体のように圧力が滑らかに一様流の圧力へ戻りません。

まとめ

  • 粘性流体における翼型まわりの流れでは境界層が発達する。
  • 前縁から最大翼厚位置までは層流境界層が維持される。
  • 最大翼厚位置より後方で遷移・剥離現象が起こる。
  • 剥離現象が圧力抵抗の原因となる。
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ABOUTこの記事をかいた人

1985年9月生まれ。大阪出身。息子と娘の2児の父。
東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程修了。
学生時代は数値流体力学を用いた航空機の空力設計の研究に従事。
卒業後は航空機製造メーカーにて旅客機の設計を担当。