圧力勾配とは
圧力勾配(pressure gradient)とは、流れにおける流れ方向の静圧の変化の割合(傾き)のことです。
- 負の圧力勾配(順圧力勾配):流れ方向に圧力が低くなる変化の傾きのこと
- 正の圧力勾配(逆圧力勾配):流れ方向に圧力が高くなる変化の傾きのこと
圧力勾配が発生する流れ
圧力勾配は、円柱や翼型のように物体形状が丸みを帯びていると発生します。
物体を正面から見て最も膨らんでいる位置(最外縁)が圧力勾配の正負の切り替わりのポイントになります。
圧力勾配が流れに及ぼす影響
負の圧力勾配が流れに及ぼす影響
負の圧力勾配の流れでは、高い圧力から低い圧力に向かって圧力の押す方向に流れます。そのため流れはアシストされ層流を維持しやすくなります。
この負の圧力勾配を利用した技術として層流翼があります。
正の圧力勾配が流れに及ぼす影響
正の圧力勾配の流れでは、低い圧力から高い圧力に向かって圧力に対抗して流れます。そのため流れは止められ乱流に遷移しやすくなります。
また流れを止める働きは境界層の剥離の原因にもなります。
負の圧力勾配の遷移抑制効果の実験例
負の圧力勾配が遷移を抑制するという実験結果がNACA-TN-4313で報告されています。
実験では、上の3つの形状について境界層遷移(物体表面の流れの遷移)の位置を計測しています。
一つ目のコーン型は圧力勾配がない形状、二つ目と三つ目の尖頭型は一定の負の圧力勾配が発生するように設計された形状です。
実験結果が上のグラフです。(NACA-TN-4313より読み取り作成)
縦軸はコーン型の乱流遷移の位置を基準として、遷移点がどれだけ(何倍)後方に移動したかを示しています。横軸は右へ行くほど負の圧力勾配が大きいということを意味します。
この結果から、負の圧力勾配が大きいほど層流が維持されることが分かります。
まとめ
- 圧力勾配とは、流れにおける流れ方向の静圧の変化の割合(傾き)のこと。
- 正と負の圧力勾配がある。
- 正の圧力勾配には、乱流への遷移促進や境界層の剥離の原因となる。
- 負の圧力勾配には、層流を維持する効果がある。
参考資料
- NASA-SP-367: Introduction to the aerodynamics of flight
- NACA-TN-4313: Effect of favorable pressure gradients on transition for several bodies of revolution at Mach 3.12
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次の記事では、層流から乱流への遷移の3つ目の要因である「表面荒さ」について解説します。
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