レイノルズ数とは
レイノルズ数(Reynolds number)とは、流体の慣性力と粘性力の比で表される無次元数で、流れにおける粘性の影響を表す尺度です。
\(Re=\displaystyle \frac{\rho V l}{\mu} = \frac{V l}{\nu} = \frac{\text{慣性力}}{\text{粘性力}} \tag{1}\)
\(Re\) | レイノルズ数 [−] |
\(\rho\) | 流体の密度 [kg/m3] |
\(V\) | 流体の速度 [m/s] |
\(l\) | 代表長さ [m] |
\(\mu\) | 粘性係数 [Pa・s] |
\(\nu\) | 動粘性係数 [m2/s] |
(参考:航空力学の基礎(第2版), P.27 (2.34)式)
レイノルズの実験
1883年イギリスのオズボーン・レイノルズは、円管内の流れの遷移がレイノルズ数によって整理できることを示しました。
円管内の流れにおいて \(Re < 2100\) では層流が保たれ、\(Re > 40000\) では乱流に遷移します。
このようにレイノルズ数が大きいほど乱流になります。そしてレイノルズ数によって層流か乱流か判定することができます。
レイノルズ数と流れの関係
レイノルズ数は流れに影響を及ぼす重要なパラメータです。流れとどのような関係があるか一つ一つ解説します。
- 層流から乱流への遷移
- 粘性の影響範囲
- 流れの相似
①層流から乱流への遷移
粘性には流れを安定させる減衰効果があります。レイノルズ数が大きくなる(慣性力が大きくなる)と流れにおける粘性力の割合が小さくなり層流から乱流に遷移しやすくなります。
この実験動画はアメリカのNCFMF(National Committee for Fluid Mechanics Films)によって作成されたレイノルズ数による流れの比較を可視化した映像です。
レイノルズ数の一番大きい \(Re=3000\) の流れでは、赤い流体はすぐに乱流に遷移していることがわかります。
②粘性の影響範囲
レイノルズ数が大きいからといって粘性を無視できるわけではありません。レイノルズ数が大きくなると、流れにおける粘性の影響範囲が狭くなります。
レイノルズ数が大きくなるにつれて粘性の影響範囲は徐々に小さくなり、粘性の影響範囲は物体のごく表層とその後ろの流れに限られてきます。
③レイノルズの相似則
レイノルズ数のもう一つの特徴として流れの相似があります。
レイノルズ数が同じであれば流れの様子は相似形になります。この相似則をレイノルズの相似則(Similality law of Reynolds)といいます。
この相似則を利用して、飛行機の設計では実機サイズより小さい模型で風洞試験を行っています。
自分の設計する飛行機の翼型の空力性能を知りたい場合、レイノルズ数が一致する風洞試験結果を見れば、その翼型の性能をそのまま使用できます。
まとめ
- レイノルズ数とは、流体の慣性力と粘性力の比で表される無次元数。
- 層流から乱流への遷移はレイノルズ数で決まる。
- レイノルズ数が大きいと粘性の影響範囲が狭くなる。
- レイノルズ数を合わせれば、流れは相似形になる(マッハ数0.3以下)。
参考資料
次の記事
次の記事では、層流から乱流への遷移の2つ目の要因である「圧力勾配」について解説します。
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