翼型といっても旅客機のような厚みのある翼(厚翼)、鳥のような薄翼など様々です。翼型にはそれぞれ得意・不得意な飛行領域(レイノルズ数)があり、飛行条件に合わせて翼型を選択する必要があります。
この記事では、レイノルズ数によって厚翼や薄翼の空力特性がどのように変わっていくのか、実際の風洞試験データをもとに解説します。
比較する翼型形状と流れの条件
翼型形状
ここでは薄翼・厚翼の代表的な翼型として上の3つの翼型を比較していきます。
流れの条件
今回比較する流れの条件は以下の4つのレイノルズ数です。
- レイノルズ数:4.2×104(42000)
- レイノルズ数:8.4×104(84000)
- レイノルズ数:1.68×105(168000)
- レイノルズ数:4.2×105(420000)
レイノルズ数42000は小型のラジコン飛行機や鳥の飛行領域(コード長0.15mで速度15km/h程度)です。
更に10倍のレイノルズ数420000にもなると、大型のラジコン飛行機で結構なスピードが出ているような飛行条件(コード長0.3mで速度75km/h程度)です。
イメージしやすいように飛行速度とコード長の大きさの例を示しておきます。
レイノルズ数 | 飛行条件 | |
コード長0.15m | コード長0.3m | |
42000 | 15km/h | 7.5km/h |
84000 | 30km/h | 15km/h |
168000 | 60km/h | 30km/h |
420000 | 150km/h | 75km/h |
レイノルズ数を変化させたときの厚翼と薄翼の空力特性の比較
飛行条件:レイノルズ数42000
レイノルズ数42000の飛行条件では、薄翼(Göttingen 417aやFlat plate)の揚力性能が優れていることが分かります。
驚くべきことに厚翼(N60)はただの平板にも劣っています。
飛行条件:レイノルズ数84000
レイノルズ数84000の飛行条件では厚翼(N60)の性能が向上しましたが、まだキャンバー付きの薄翼(Göttingen 417a)には及びません。
飛行条件:レイノルズ数168000
レイノルズ数168000の飛行条件で、ようやく厚翼(N60)が最も優れている翼型になりました。
この飛行領域では薄翼よりも厚翼の方が良いということがわかります。
飛行条件:レイノルズ数420000
レイノルズ数420000の飛行条件においても、厚翼(N60)が最も優れた空力特性を示しています。
まとめ
鳥の飛行のような飛行条件(レイノルズ数42000)では、今回取り上げた翼型の中では厚翼より薄翼が優れており、レイノルズ数が大きくなるにつれて厚翼の空力特性が向上することが分かりました。
小型のラジコン飛行機では、今回取り上げたレイノルズ数(42000〜420000)の飛行条件になる場合があるので、翼型を設計する際には薄翼・厚翼の扱いには十分注意する必要があります。
参考文献
- NASA-TM-X-60976: Aerodynamics of the model airplane.Part 1. Airfoil measurements, Schmitz, F. W.
- Aerofoil sections: Friedrich Wilhelm Riegels (PDFが開きます)
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