上反角効果 ー 飛行機の主翼上反角によるローリング安定の仕組み

上反角効果とは

上反角効果とは、飛行機の主翼上反角によって自動的にローリング姿勢が安定する働きのことです。

主翼に上反角を付けているだけで自動的にローリング姿勢が安定になるので多くの航空機に採用されています。

上反角とは

上反角とは、飛行機の主翼を正面から見たときに主翼の前縁が水平線となす角のことです。

ローリング(横揺れ)とは

ローリング(横揺れ)とは機体が左右に傾く回転運動のことです。

 飛行機の軸定義はこちら

上反角効果の仕組み

①外乱により機体が傾く

突風などの外乱により機体が右舷側へ傾いたとします。

②揚力と重力の合力の方向へ横滑り

機体が傾いても発生する揚力は変わりません。

機体の傾きに合わせて揚力の方向が変わるので、機体重量と揚力の合力の方向に機体は横滑りします。

機体が傾いた角度を β

をとすると、水平線に対して β2

の角度で横滑りします。

③横滑りにより相対風が発生

機体が横滑りするということは、左右の主翼に横滑りと反対方向の相対風が作用します。

ここで左右の主翼に発生する揚力について考えるので、相対風を翼に垂直な成分に分解します。

④相対風により左右の主翼に迎え角差が発生

右舷主翼の迎え角の減少

右舷主翼では、相対風によって下向きの速度成分が作用します。

(1)VS⋅sin⁡(β2−γ)

結果、迎え角の減少量は以下のように表されます。

(2)ΔαR=−VS⋅sin⁡(β2−γ)V∞

左舷主翼の迎え角の減少

左舷主翼では、相対風によって下向きの速度成分が作用します。

(3)VS⋅sin⁡(β2+γ)

結果、迎え角の減少量は以下のように表されます。

(4)ΔαL=−VS⋅sin⁡(β2+γ)V∞

(2)式と(4)式の差は上反角 γ

の符号の正負だけです。すなわち左舷主翼の方が迎え角の減少量が大きいです。

⑤左右の主翼の揚力差により機体は元の姿勢へ戻る

横滑りによって左舷主翼の方の迎え角が大きく減少するので、左舷主翼の揚力の方が小さくなります。

結果、左右の主翼に揚力差が発生し機体が元に戻る方向の復元モーメントが生じます。結果、機体は元の姿勢へ戻ります。

まとめ

飛行機の主翼上反角には、以下のような仕組みでローリングが安定の働きがあります。

  1. 飛行機が左右に傾くと横滑りする。
  2. 横滑りにより左右の主翼の迎え角が減少する。
  3. 上反角があると左右の主翼の迎え角の減少に差が出る。
  4. 結果、左右の主翼で揚力差が生まれる。
  5. 揚力差により復元モーメントが生じ機体は元の姿勢に戻る。

ただし、ローリング安定が良いということは運動性を犠牲にしていることでもあります。

参考資料

  • 模型飛行機の科学 ーフリーフライト機の理論と設計ー
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ABOUTこの記事をかいた人

大阪出身。
東北大学大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 修士課程修了。
学生時代は数値流体力学を用いた航空機の空力設計の研究に従事。
卒業後は飛行機設計関連の仕事を担当。